いつからそうなったんだろうか、よく分からない。
自分では、目が悪くなってきて、目を細めないと見えないからだといつも言いはっている。長年、毎日8時間もパソコンの画面を見て仕事をしてくれば肩もガチガチに凝るし、そりゃあ目も悪くなる。
入社して最初の頃は、若さが元の状態に戻してくれたが、「若い」から「中年」、「中高年」と歳を重ね、仕事もバリバリと新しい製品を開発する当事者から、人間関係と開発工程をコントロールする管理職になり、元に戻す力は衰え、退職する頃には、完全に消え失せ、ますます眉間の縦皺は増してきた。
それでも、男の顔は歳をとればとるほど魅力的になるのだと信じて、テレビに映る70歳台の男優を指し示し、「男の顔は、若い頃より、歳とった頃の方が魅力的なのだ」と言ったりしていた。
それが突然、「お父さんは顔で損しているね」と娘から言われ、「どうして?」「だって、折角の美味しい料理を不味そうに食べているもん」と言われると自分の今までの考えが見方によってこうも変わるかと、…グッとくる。
「自分では普段通りなんだけどなぁ」「ほらほら、また眉間に皺寄せているよ。」。
どうやら、今の自分の顔は渋柿同様の有り様らしい。近所の柿の木から熟した柿は道路に落ち、ベチャという音と共に潰れている。
渋柿どころか、きっとあの落ちて潰れた柿の方が相応しいのか、などと思いつつ娘との久しぶりのレストランでの食事を終えた。