2011年6月22日水曜日

今度は、瑞牆山

瑞牆山は、標高2230メートル。
みずがきとは、神社の周囲に巡らす垣根のことで、もともとは「瑞垣」とも書くようだ。
瑞牆山南東にある金峰山同様、山岳信仰と結びついていたんでしょうか。
2名の山ボーイは、高速休日千円の最後の6月19日、早朝5時15分に待ち合わせ、2豚トラック、いや乗用車に乗り込む、これから待ち受ける登山に心うきうきと出発したのである。


天気は曇り。じとっと体にまとわりつく異様な湿気は、これからの登山への高揚にかき消されていた。

中央高速を順調に飛ばし、須玉インターで降りる。
茅ヶ岳の場合は、韮崎インターで降りたが今回は一つ先のインターである。
天気は依然として曇り、時折雨がぱらつくがザーと降ることはない。
しかし、本来は360度の山頂からの眺望は無理だろう事は想像できる。

増富温泉までのラジウムラインを通り過ぎ、瑞牆山荘登山口の無料駐車場にたどりつく。
途中、後ろからは一台の車も見受けなかったのにどうだろう。駐車場は、9割方が埋まっていた。
「なんじゃこりゃ、我々が遅すぎたのか! 人気がある山なんだぁ~」。相方のため息が聞こえる。
しかし、時刻は、8時ちょい過ぎ。登山開始時刻としては、まあまあである。

中高年の入念な準備体操の後、まずは、富士見平小屋をめざし、いざ出発。8時10分を回った。

富士見平小屋までは、約1時間である。こちらのコースから金峰山を目指すこともできる。
登山道は、それほどきつくはないが岩が多く歩きづらい。
富士見平小屋に到着すると、ここから金峰山へ目指すルートと瑞牆山ルートとに分かれる。
有料トイレがある。小屋直前に水場があるのは蒸し暑い日の登山者にとって助かる。

富士見平小屋で小休止し、瑞牆山ルートを少し歩くと下りになる。
「せっかく登ったのに下るなんてもったいない。」。後ろでふうふういいながらついてくる相棒がつぶやく。
これで標高を一気に下げ、その後、登り一直線に頂上を目指す。なんと体にいい山だろう。
すでに、山ボーイ達のおしゃれな帽子は脱ぎ捨て、頭にきりっと締めた手ぬぐいからは、汗がしたたり落ちている。
天鳥川が見えるとそこが下りの最後。そこからまた登りになる。

以前に登った金峰山から見た瑞牆山は、荒々しい岩の山だったが、天鳥川を越えた直後、その象徴でもある大岩が出現する。
桃太郎岩である。
高さは、20メートルはあるだろうか。大きな花崗岩がぱっくりと割れた状態で登山道の前方を塞いでいる。
「これが本当に桃太郎岩だったら、おそらく、メタボな山ボーイが20人くらい生まれてくるね。」
なるほど、その位の巨大さである。
ストック代わりになるくらいの木の枝をつっかい棒に見たて、10数本桃太郎岩に立てかけているのは、登山者のユーモアだろう。
「この位のゆとりがないと山は登れないよね。」。なるほどなるほど、仰るとおり。

前方を塞がれているように見えるが右横に、岩の巨大さに比較して可愛らしい梯子がある。
その梯子を登り、前進する。

登山道にある岩が大きな物になってきた。その岩々を時には設置されたロープを使い、登って行く。
メタボな体にはしんどい。
メタボって何、と豪語するだろう若者達が、「こんにちは~」と声をかけつつと傍らを追い抜いていく。
「ちっ、俺たちも昔はねぇ~」。始まった。初老の域に達した中高年の、”これでも昔は話”。
「はいはい、そうね。昔はねぇ。知力・体力・気力充実でないのは金だけだったよね。」。
いつものパターンで早いとこ会話のけりをつけないと、中高年の話は長く、そして同じ事を繰り返す。
すでに息あがっている身には、つらい。

瑞牆山は、概して荒々しい山だが、登って行くうちに、ピンク色のシャクナゲの花に出会う。
きつい色のピンクではなく、透明感のあるピンクの色がどんよりと雲り木々に覆われた登山道に突然として現れる。
なんでこんな岩だらけの山にと思うが、歩きながら、「瑞牆山にはシャクナゲが似合う」と思うようになってくる。

疲れを吹き飛ばすであろうその花を、何人の登山者がカメラに納めたことだろうか。

「ふうふうふ~」。相方の息がもう駄目だろうと思う頃にまわりの樹林帯の様子が異なってきて、まわりが明るくなる。
頂上が近い証拠だ。
「もうじきに頂上だから頑張ろう。」。云っている自分の息があがっているのが分かる。
だいたい、頂上付近はいつも急斜面になる。これから向かうだろ急斜面を想像し、そろそろ休憩かと思う頃に大ヤスリ岩が出現する。
「大ヤスリ岩だ!」「えっ、大安売り岩?」。むむっ、この調子だと、まだまだ、我が相方は、余裕だと思わず認識。

「この向こうが頂上だろう。」「ええっ、本当かな? とてもこの大きな岩は上れそうにないよ。」
無理もない、それほどの巨大岩が前方を空に突き出ているのである。
我々が呆然としている脇を、山ガールの可愛らしい声が聞こえてくる。「こんにちは~」。
カラフルなレギンスとスカートに、つばの広い帽子をかぶった2人の若い山ガールが脇をさっそうと通りすぎていく。
目で後を追うと、大ヤスリ岩の脇を回り込み、北側へ向かっている。

そうなのだ。大ヤスリ岩は上らず、北側への回り込みの道が頂上へつながっている。
頂上までのあと少しの道は急だ。
もうだめっという頃に頭の上から賑やかな声が聞こえてくる。おそらく頂上からだろう。
「若い山ガールが沢山いるに違いない。だから中高年男子は嫌らしい、などと云われるだろうか。」
疲れで妄想が出始める頃に漸く頂上に到達する。

頂上は、狭く、当然に岩だらけである。眺望は、雲のために見えない。
期待した、若い山ガール達は、自分たちと同世代の、とうがたった・・・集団だった。
「ああ~、ここも雲で覆われていればよかったのに。」
いかにも残念そうな、相方の言葉が頂上の周囲を覆う雲の中に吸い込まれていった。

天気が良ければ、金峰山、八ヶ岳、富士山など360度の眺望だったが、残念ながら雲に覆われ視界ゼロ。
食事もそこそこに下山を開始した。
頂上から、とうのたった山ガールの甲高い声が雲の流れとともに聞こえてきた。

大きな岩とシャクナゲ、最後はとうのたった山ガールの甲高い声で、瑞牆山山行は終わった。

(注)
温泉は、増富温泉。
茶色の湯。源泉は、25度。冬は冷たすぎると思うが初夏にはそれほどでもない。
ずっと疲れる位の温度だ。おすすめの温泉といえる。

帰りの中央高速は、休日1000円の特別対応の最後の日であり、30Km以上の長い渋滞につかまった。
到着時刻は、午後9時。長い一日であった。