山岳会の友人と燕岳に登った。
金曜日、夜11時発、朝5時30分有明荘着の夜行バスである。
50代も後半であるし、今更強行スケジュールでもないだろうにと思うが、夜行電車の指定がとれない、登山スケジュールを考えると昼には山頂付近の燕山荘までは行かなくてはならない、ということでしょうがない。
案の定、夜行バス車内ではよく眠れなかったが、隣にいた50代半ばの友人はそうではなかったらしい。
到着後、眠いなか、準備をして、6時に有明荘を出発。
燕岳は、およそ30分おきに、第1ベンチ、第2ベンチ、第3ベンチとベンチ設置の休憩場所があるのでペースがつかみやすく、ありがたい。
中でも、富士見ベンチ後の最後の合戦小屋には、麓から運んであるスイカやスープなどが販売されている。
小屋を過ぎると1時間ほどの最後の登りで燕山荘に着く。
燕山荘にチェックインし、荷物を預けて、ランチを食べて、約1時間の燕岳山頂をめざす。
こう書くとずいぶん簡単そうな山行であるが、燕岳の登りは、日本三大急登と呼ばれるしんどい登りである。折からの猛暑が加わり、全身の毛穴が全開状態、頭に巻いた手ぬぐいは絞れば汗がしたたるほどである。
持参した500ミリリットルのペットボトル4本が空になったのはいうまでもない。
また、合戦小屋名物のスイカがどれだけおいしかったことか、これは表現のしようがない。
8分の1切れが800円だから、相当儲けているね、などと下世話なことは考えてはいけない。
ここは、素直に食し、そのありがたさに感動すべし。
燕山荘から燕岳山頂までは、片道40分くらいの山頂固有の花崗岩の白い砂礫とハイ松の稜線であり、それほどしんどくはない。
時期的にコマクサが可憐な花を見せてくれるので楽しめる。
また、いるか岩など、「いやぁ~こりゃ、本当にそっくりだ」、と思わず叫んでしまうほどの自然の岩の造形なども楽しい。
しかし、折からの日差しが、白い花崗岩の砂礫に反射して、非常にまぶしい。
この時期、サングラスは必須、忘れると強力な紫外線により白内障を引き起こしてしまうかもしれない。
山頂は、360度の展望であるが、場所的には広くないので、お約束の写真など撮り終えたらさっさと後続の方にゆずるべし。
ただ、日ごろの行いがよく、従って、天候にもめぐまれ、かつ余裕があるなら、槍ヶ岳、大天井岳、常念岳、北アルプス、富士山、八ヶ岳などがご挨拶してくれる。
山頂を制覇し、燕山荘に戻ると、誰もが喉を潤したいと思うだろう。
何しろ、体中の水分が放出されたとおもうくらいだから。
山頂制覇の達成感も、それを強力に後押しする。
「ダイナマ2杯、至急!」、友人がそう叫ぶのを非難する人は誰もいない。
むしろ、2763mの燕岳の稜線にある山小屋にビールが、しかも、下界では昨今めったにお目にかかれなくなった、大ジョッキにありつけることに感謝する筈である。
見渡せば、同様に感謝しつつ大ジョッキを空けている登山者が沢山いたということは、皆同じ思いだったに違いない。
「あぁ~しんどかった。でも、山はいいなぁ~。」、友人はそう言ったが、登山がいいのかビールがよかったのかいずれかは定かではないし、クライマーズ・ハイに浸っている友人の気をそぐほど野暮ではない。
「カンバーイ、また来ような!」、思わず叫んでしまったのは幻だったのであろうか。